天珠の歴史

吐蕃王国以前までの天珠は、ごく限られた者のみが所有し、使用の際も限られた者の前でのみ使われ、一般にはお目にかかれない神秘的で秘密の宗教的道具であったのではないだろうか。吐蕃王国設立以降は仏教伝来により、ボン教的な天珠の用途が薄れてゆき、いつしか仏教が天珠を仏教的道具に取り込んでいき、一般の僧侶なども身につけるようになって秘密的な宗教道具ではなくなり一般人の目に触れる機会が増えていったのだと推測する。
それを裏付けるようなものは「ビーズ類歴史的分類表」という本があり、その中では、天珠は紀元後600年頃に突然現れて紀元後900年頃には衰えはじめ、紀元後1500〜1700年半ばまでその技法はモンゴルに引き継がれているようであるのだが、これは以下のように考えられる。

「紀元後600年頃突然現れる」
 吐蕃王国がシャンシュン王国を滅ぼし、チベットを統一した時期。
「紀元後900年頃衰えがみられる」
 ある一定の者に行きわたり、後は天珠を弟子や子孫に継承していくようになり、新たな天珠を作成する必要性がなくなってきたため。
「紀元後1500〜1700年半ばまでその技法はモンゴルに引き継がれている」
 当時は元の支配下であったため、当然あり得ることである。

紀元後17世紀頃に中国で天珠の模造品が作られるようになり、1970年頃に台湾で天珠がブームになったといわれている。